同一性保持権

これはとにかく難しい問題で、前にもちょっと書いた事があります。
基本的には、著作権判例百選にも載っているいわゆる「法政大学懸賞論文事件」で著作権法20条2項4号の適用は厳格にされるべきで、原則として改変は一切認められない、というのが通説、というか多数説だったように思えます。
ところが、この度、平成18年2月27日判決東京地裁平成17(ワ)1720号で、改変がガンガン認められてしまい(つまり、2項4号のやむを得ないと認められるに該当する)、最終的には同一性保持権の侵害とはならない、という結論が出てしまいました。
とにかく、同一性保持権の適用を緩やかに考えた、と言われている上記「法政大学懸賞論文事件」地裁判決以上に改変を認めてしまっています。
この案件は、ざっくり言うと、原告が会社に在職中に作成した社外講習会用の資料を、原告が講師を辞めてからも他の者が一部修正の上、社外講習会で使用し続けていた、というもので、法人著作の有無、同一性保持権の侵害の有無等について争われた事例で、実務的には非常に興味深いものです。
法人著作かどうかの結論も興味深いのですが、判決文を読み進み、同一性保持権の所まで行って、椅子から落ちそうになりました。ここまで、改変を認めてしまったいいのか、そりゃまぁ、改変したい者(校正者や編集者)はうれしいでしょうけど・・・・・
もしかしたら、著作物の中身が講習会用の資料、という事も改変の幅を大きく解釈したのかもしれませんが、どうなのでしょうか?
個人的には、ぜひ、高裁の判断を仰いで欲しいとは思いますが、どうなるのでしょうか。